ホンダS600
ホンダS600はS500の後継車種としてホンダが1964年〜1965年に製造・販売したFR(フロントエンジン・リアドライブ)、2シーターのオープンスポーツです。販売終了から40年以上経った現在も「エスロク」の愛称とともにヴィンテージカーとして人気の高い一台です。
S500との相違は外見的な相違は、冷却風量を確保する為に開口を増したメッキグリルと、それに伴うバンパー形状の変更のみです。ユニークなヘッドランプなど愛らしい外見で、本田宗一郎のお気に入りだったといわれており、リアフェンダーの張り具合は芸者の臀部をイメージしたものともいわれています。
当時の販売価格は50万9,000円で、サブマフラー、ヒーター、ラジオ、助手席サンバイザー、バックアップランプ(左右)、サイドシルプロテクターを標準装備としたSM600もラインナップされました。1965年には ビジネス用の名目で、クーペが追加されました。このクーペの車重は20kg増加しています。
エンジンは先代モデルのS500同様の水冷直4 DOHCエンジンで、ボア、ストロークともに拡大し、606ccとしたAS285E型です。同社の一連の4ストローク2輪グランプリマシンやF2、F1のエンジンと同じ設計を取り入れた超高回転型エンジン(9,500rpmからがレッドゾーン)を採用しています。当時の日本車としては珍しいDOHCと4連キャブレターを装備し、606ccという限られた排気量の中で、回転数で馬力を出す2輪用エンジンの様な特性のエンジンでした。装備された京浜精機製作所製4連キャブレーターや等長エキゾーストマニホールドに当時のホンダF1の雰囲気が読み取ることができます。
駆動方式はFRで、フロントサスペンションは縦置きトーションバー・スプリングとダブルウイッシュボーン、リアサスペンションはコイルスプリングとトレーリングアームの組み合わせの4輪独立懸架です。このうちリアは駆動用チェーンケースをトレーリングアームと兼用としたチェーンアクスルを採用しています。これはオートバイやスクーターでは採用例が多いものの、4輪車ではほとんど例が無いチェーン駆動と後輪独立懸架の組み合わせという構成となっています。この方式は、駆動トルクのリアクションにより、アクセルペダルを踏み込めばリアを持ち上げ、戻せば沈み込む挙動を特徴とし、優れた路面追従性を実現していました。
2輪やフォーミュラカーで培われた技術を元に、自動車製造の経験不足を補うべく、自動車としては独特のアイデアやメカニズムが散見される車両でした。
